化粧品の許可をとる方法【化粧品製造販売業・化粧品製造業】
2022.10.12
これまでは、OEM 会社に依頼して自社ブランドの化粧品を開発する流れを書いてきましたが、今回は、自社で作って販売する方法についてご紹 介します。もともと他業界も含めて、ものづくりをされている企業が化粧品の製造許可を取って新規参入する事例はよくあります。食品や雑貨品など、化粧品に比較的近い商材から応用して、化粧品の製造販売を始めるところもあ ります。
自社で化粧品を製造販売をするメリット
自社で化粧品を製造販売する最大のメリットは、時間的・技術的制約が なくなり、希望する仕様をより現実的にできる点です。OEM 会社に依頼す 際の一番のネックは、スケジュールを OEM 会社に合わせる必要があり、 調整が難しいことです。 これに対し、自社で製造販売を行えば、そうした調整を自社の都合でコントロールできるようになります。
また、OEM 会社で開発する場合は、どうしても技術的な制約があり、OEM 会社でできることに限られてきます。その点、自社で開発する場合は、もちろん投資が必要になりますが、製造まで行えるようになると、長期的に見て大きくコストダウンもできます。
化粧品の許可の種類
化粧品の製造販売を行う上で必要な資格は 2 種類あります。
1 つは化粧品製造販売業許可、もう1 つは化粧品製造業許可です。 化粧品製造販売業許可は、化粧品を製造・販売するために必要な会社としての資格であったり、海外化粧品を輸入するために必要な会社としての資格 です。
化粧品製造業許可は、 化粧品を製造するために必要な会社の資格で、 「製造」には包装、表示、保管行為も含まれます。 化粧品製造業は化粧品の製造だけを行える許可なので、この許可だけでは 製品を市場に出荷できません。
したがって、化粧品を自社で製造販売する会社は、この化粧品製造販売業許可と化粧品製造業許可の両方を取得しています。 もちろん、片方だけ取得している会社も存在します。化粧品製造販売業許可 のみ取得している会社は、製造だけを外部委託し、自社の責任で市場に出荷しています。これは化粧品の裏面に「製造販売元」として会社名が記載されることになります。 また、化粧品製造業のみを取得している会社は、基本的には受託製造となり、 一部の OEM 会社や、化粧品メーカーの下請け会社などが該当します。
化粧品製造販売業・化粧品製造業の許可取得の流れ
化粧品製造販売業許可に関しては、FD 申請という専用ソフトにて申請書 を作成し、提出する流れになります。 FD 申請ソフトは厚生労働省のウェブサイトから無料でダウンロードできます。その際、 商品の品質に関わる手順書を示す GQP(Good Quality Practice)・ 商 品 の 安 全 性に関わる手 順 書を示 す GVP(Good Vigilance Practice) の 2 つの書類作成が必要です。 各都道府県薬務課ホームページに詳細が書かれていますので、参考にしながら作成していくのがコツです。
申請書に加え、GQP・GVP の書類を作成したら、とりまとめて提出します。 書類が受領されると、管轄都道府県にある薬務課の担当者による実地検査 があります。申請内容に相違がないかの確認に加え、どのように運用するか? についてのヒヤリングがあります。 内容に問題がないと評価されれば、化粧品製造販売業許可が下りる流れで す。
このように許可取得のみでしたら、人的要件をクリアすれば難しくありま せん。実際に難しいのは、実務で運用していくことです。したがって、経験者が社内にいることがベストですが、いない場合は専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。
化粧品製造業許可に関しては、化粧品製造販売業許可と同じく申請書を作成しますが、構造設備の図面、器具に関するリストなどが必要になります。 これに関しては、より実務経験が大事になってきます。薬務課が親切に相談 に乗ってくれることも多いので、内装工事や大きな設備購入の前に相談する ようにしましょう。
許可取得に必要なもの・期間
化粧品製造販売業と化粧品製造業には人的要件があります。それぞれ、総括製造販売責任者および、責任技術者を置く必要があります。 総括製造販売責任者・責任技術者になれる資格とは、おおまかに下記のい ずれかになります。
●薬剤師
●化学系4大卒
●高校で化学を履修して、化粧品製造販売業者での実務経験 3 年以上
取得までの期間は、申請書提出から実地調査を経て許可が下りるまで、約 1ヶ 月〜 3ヶ月程度です。これは各都道府県により異なりますので、該当する県 の薬務課に確認するようにしましょう。
化粧品製造工場に必要な物的要件
化粧品製造工場に必要な物的要件としては、作ろうとしている化粧品製造に必要な設備や器具が揃っているか、換気設備があるか、床は板張り、コ ンクリートなどになっているか、また、製造場所が製造所以外の場所と明確に区別されていているか、などがあります。
例えば、エアーシャワーが必要とか、大きな製造釜が必要ということはありま せん。自分たちの会社の規模や、これから作る化粧品の品目、敷地面積によって状況は変わると思いますので、事前に図面を薬務課に見てもらい、要件を満たせるか、改築などの必要性を確認しましょう。
まずは小規模で始めたい方向けに私の経験でおすすめなのは、設備も器具も最小限にして、微生物汚染の心配の少ない、石鹸やオイル製品の製造 から始める方法です。
化粧品は防腐剤を入れていても製造工程中に菌が混入し、腐ってしまうことがあります。菌汚染を防ぎながら衛生的に製造をするのは、経験とノウハウ が必要です。業界経験者だとしも、ここは十分慎重に検討しましょう。消費者に健康被害を負わせてしまってからでは、取り返しがつかないからです。